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世界遺産 ベネディクト会聖ヨハネ修道院


ミュスタイア(Müstair)の村の外れにある聖ヨハネ・ベネディクト会修道院(Benedictine Convent of St John)。こぢんまりとした外観には質素な印象を受けます。


この修道院を見てみたいという一心でこんな谷間をひたすら車で走ってきました。雪景色の中の修道院はとても美しいそうなので、ぜひとも冬にも来てみたかったのですが、冬のドライブは相当厳しそうだと感じました。


この修道院の先にはもうスイスの村はありません。目と鼻の先はイタリアとの国境で、イタリアに入っても小さな村々が点在しているだけです。70キロ走ってやっとメラノ(Merano)という小さな街にたどり着くことができます。100キロ先には県都でもあるボルツァーノ(Bolzano)があります。いずれにせよ、イタリア側からアクセスしてもかなり交通の便は悪いはずです。


そんな人里離れた村にある修道院にやって来たというだけで何となく神秘的な雰囲気を感じてしまうのですが、この修道院は学術的にも非常に興味を持たれています。カロリング様式という古い建築様式で建設されているのこの修道院は、その保存状態が極めて良いそうで、構造物として非常に貴重だとされています。
長い年月を経ても良好な保存状態を保てたのは地政学的な要因が大きく影響していると考えられています。湿気がなく晴天の多いエンガディン地方の気候と、あまりに不便な場所にあることから政治的な影響を受けずに済んだのではないかということです。


さらに、教会の内部を埋め尽くすフレスコ画もとても貴重なものとされています。フレスコ画は石灰水に溶いた顔料を使って描く技法ですが、やり直しができないのでかなりの技量が問われるそうです。その代わりに保存性が良く数百年経っても色鮮やかな状態が保てます。


聖書の物語をテーマにしたこのフレスコ画は、19世紀に描かれた壁画の下に9世紀に描かれた壁画が発見されたそうです。祭壇の上あたりは一部の絵が欠けており、その下地にも絵が描かれていることがわかるかと思います。このフレスコ画の重ね書きには考古学者たちの熱い視線が注がれているようで、今現在でも最新の技術を用いた壁画の解析がなされているようです。


1100年以上も前に描かれたフレスコ画が良い保存状態で残されることはかなり稀なことであり、カロリング様式の建造物の保存状態の良好さと合わせて世界遺産の登録基準を満たしたのです。


ただ、この修道院は過去の歴史的遺産であるだけではありません。すごいのは、現在も修道女たちが伝統的な生活様式を継承して生活する現役の修道院であることです。こんなへんぴな場所で昔ながらの生活を営む人々がいたことに衝撃を受けました。これまでもいろいろ修道院を見て廻りましたが、その生活の様子が垣間見えたのは初めてのことでした。


修道院の見学ルートは夏でも冷んやりとして、冬の生活の厳しさを連想させます。この見学ルートには所々パネルが張ってあり、この修道院についていろいろ書いてありました。世界遺産に登録されたと言っても、交通の便の悪いことからさほどの観光収入が得られるわけでもなく、修道院の存続は楽ではないようです。

個人的には博物館の入場料などはもっと値を上げても良いような気がしました。ここまで来て見学せずに引き返す人はまずいないですからね・・・(笑)。


見学ルートを見終えた後、修道院の裏手に回ってみました。そこには裏庭があり、それを囲むように修道院で暮らす人々の住まいがあるのですが、その反対側の一角に奇妙な建物を見つけました。

一見、木枠の窓がある住居のように見えるのですが、実際にあるのは木枠だけで窓は絵になっています。察するに全く光を通さない建物だと思いますが、どんな用途があるのか不思議に感じます。木枠だけがリアルなのも変な気がします・・・。不思議な空間でした。


スイスの秘境と言われる村、ミュスタイア(Müstair)にある修道院だけあってかなり独特の雰囲気のある場所でした。ここを訪れてからもう2年近くになるのですが、その印象は鮮明な記憶として残されています。スイスにのんびり滞在できるなら是非足を運んでみることをおススメします。


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グアルダ(Guarda)

スイスの田舎の良いところは、田舎特有のさびれた感を全く感じさせないところです。

村は隅々まで管理が行き届き、その地方に伝わる文化が大切に継承され、ある種洗練された雰囲気さえ醸し出しています。

どんな辺鄙な村にもたいていホテルがあるのですが、そこでは商業主義的な下心を感じることがなく、ごく自然な形でもてなしてくれるので、訛の強い発音を聞き取れなくても居心地の良い滞在となります。

この日は一日中、ここで本を読んで過ごしました。こんな休日は何年ぶりでしょうか?記憶にはありませんでした・・・。何もしないという贅沢を満喫しました。

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エンガディン(Engadin)のスグラフィット




スイス南東部にあるエンガディン(Engadin)地方。この辺り一帯にはスグラフィットという伝統技法が残っており、個性的で美しい装飾を施された家々に魅了される。


なかでも装飾が施された窓辺の美しさがとても印象的。
『窓』というのは採光や換気のために実用的に作られるものだが・・・、



Scuol(シュクオル)


この地では家主の美的感覚を演出する格好のオブジェクトとなるようだ。



Müstair(ミュスタイア)


窓辺には家主の個性が存分に盛り込まれていた。



Guarda(グアルダ)


一般家庭のみならず、ペンションにも楽しい模様が描かれている。




Scuol(シュクオル)


これは玄関を飾る大胆な装飾。玄関そのものも立派。

表札も装飾の一部となっているところがシャレている・・・。



Sta. Maria Val Müstair(サンタマリア)


これはとても繊細なタッチで描かれていた。


陶器の模様を窓辺に描いたようだ。




Guarda(グアルダ)


こちらは年代を感じさせる装飾。


窓辺が家の歴史を刻んでいる。





Scuol(シュクオル)


エンガディンの家々の窓辺は装飾を施し、その家の歴史を刻むだけでなく、


『我が家のいま』も競い合うように飾っていた。




Sucol(シュクオル)


窓辺に飾られた花々は家主の健在ぶりを表しているのだ。




『住まいは住む人の人となりを表す』と言うが、

エンガディンの家々は窓辺にそれが集約されていた。


家主の個性はもちろん、

徹底的な美しさの中に隠れたハリのある生活感がひしひし伝わってきた。