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Ardez(アルデッツ)


グアルダ(Guarda)からシュクオル(Scuol)へと向かう一本道を車で走っているとこんな光景に目を奪われました。ここはアルデッツ(Ardez)という人口400人程度の小さな村で、この地方で人気の観光スポットであるグアルダを起点としたハイキングコースの中継地や目的地として知られています。


この特徴的な巨大な岩の上にそびえる古塔はシュタインスベルク城の名残りです。シュタインスベルク(Steinsberg)とはアルデッツ村のドイツ語名で、12世紀に建立されたこの城は15世紀にオーストリア軍に破壊され、この塔だけが岩のてっぺんに残ったまま今に至っています。この時代、スイス誓約同盟を結成してハプスブルク家に猛烈に抵抗していたスイスですが、優れた騎兵部隊を組織していたオーストリア軍に一敗地にまみれたことが想像できます。こんな静かで風光明媚な田舎ですら戦火にさらされていたわけですから、中世ヨーロッパの激しさを感じます。


国道からそれて村へ入ると石畳の通りになり、それまでうとうととしていた同乗者たちがごつごつとした石畳の振動で目を覚まします。村の中は狭い路地をはさんでかなり密集しており、なかなか車を停めるところが見つかりません。


村の中心と思われるところに広場があり、そこだけは開けていたのでここに車を停めて村を歩くことにしました。スイスやフランスの小さな村を訪れるとよくあることですが、この村には全く人気がありませんでした。でも、花の手入れがよく行き届いているのはさすがスイスだと感じます。せっかくこの村に立ち寄ったので、写真後ろ手に見えるシュタインスベルク城跡のある丘に登ろうと思ったのですが、この日はスイスでは猛暑と言ってもいいくらい暑く、丘を上る気力のある人はいませんでした。


むしろ、狭い路地の路肩に見つけたカフェの方に心が奪われていたようです。


この村もエンガディンの例に漏れず、この地独特のスグラフィット装飾が施された見事な家並みを楽しむことができます。この村の装飾の特徴として、より直線的で幾何学的な模様が多い印象を受けました。


また、家主の思いが込められたであろう強烈な個性を放つ装飾画も多く見られました。これまでにいろいろなエンガディンの村々を訪ね歩きましたが、この村の装飾画が最も個性的で主張が強かった気がしています。


でも、この村で一番印象的だったのはこの路地を吹き抜けていく風の心地よさでした。日差しは強く猛烈な暑さはあるものの、時おり吹くカラッとした涼しい風は汗をすっかりと乾かしてくれます。そんなワケで、村の散策も程々にカフェで夏の涼を嗜むことになりました。



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